『バイオ研究』に向いている人はどんな考え方を持っているのか?

バイオ・生命科学への価値観

こんにちは。

旧帝大の薬学系の大学院でバイオ研究をしているさんごろうと申します。

今記事では、バイオ研究に向いている人はどんな人か?という悩みに答える内容を用意しました。

「有機系と生物系のどちらの研究室に行くべきかわからない」

「生物系に行きたいけど、バイオ研究の厳しさに耐えていけるのかわからない」

と少しでも悩んでいる方は、ぜひ当記事をご一読ください。

日頃私が過ごしている研究室での出来事などをもとに、バイオ研究の現場の話や、

バイオ研究者として成功していく考え方などをお伝えできれば幸いです。

バイオ研究に向いている人の特徴5選

私は、遺伝子編集や細胞、生物の組織を観察する実験などを行っています。

自らの研究を進めながら、周りの優秀な先輩や同期・後輩から感じた

「バイオ研究者として向いている特徴」については以下の通りです。

  1. 新しいことに挑戦して失敗することへの恐怖心が小さい
  2. ネガティブな結果に対して感情的にならず、次への活かし方を考える

  3. 細かい作業が得意で仕事が丁寧・確認作業を大切にする
  4. 周りの人にアドバイスを求めたり、周囲に対してアドバイスすることを心がけている
  5. 活用できるものは可能な限り活用していく心構え

順番に説明していきますね。

新しいことに挑戦することへの恐怖心が小さい

自身が今まで経験したことのないことに取り組む際に、

ワクワク感を持って取り組むことができる性格は

バイオ研究者にとっては最重要と言える要素だと思っています。

逆に言うと、新しい挑戦をして失敗することに対して、

強い恐怖心を抱いてしまう人はバイオ研究では苦労する可能性が非常に高いです。

・新しく遺伝子を編集して特定のゲノムを過剰に増幅する実験をしているが、

 本当にうまくできるか不安でいつも心臓がばくばくする…

・失敗する確率が高い、または過去に失敗している事柄をひたすら繰り返すことに

強いストレスを感じる

こんな風に感じてしまう人はとてもとても辛い日々が訪れてくる可能性があります。

なぜなら、バイオ研究では実験のほとんどが失敗に終わるからです。

sangorou
sangorou

理論上当たり前にできると言われていることが再現よくできない。

簡単だと思っていたことに想定外の時間がかかる。

はたまた、実行不可能だったことが判明する。。

残念ながらこんな事態が多いのが現実なんです…

さらに、失敗や成功などと結論付けることすらできないような曖昧なデータや、

見方によってはどちらとも取れるようなデータ、

多様な解釈が可能な説得力の欠けるデータ、

本来は当たり前のように使用できるはずの抗体や技法が機能せず、

データすら出せないことが多々あります。

sangorou
sangorou

出てくるデータの多くが生産性の少ないものになってしまうところが生物学の辛いところ。

でも、逆にこの多くの失敗を積み重ねた上で成功にたどり着くことができる点で、

奥深いところでもあるんだよね。

そのためネガティブな結果でも、

「観察の結果、薬剤を添加してもControlとの差はなかった」

「遺伝子を欠損してもタンパク質の存在量の差を検出できなかった」

というようなはっきりとした分かりやすい結果が出ること自体が素晴らしいことなのです。

なぜこのようになるのかは様々な要素があるとは思いますが、最上位に来るものとして、

成功や失敗を判断する明確な指標を設けることが難しいというものが

挙げられるのではないかと思います。

そして2つ目の理由として、データ自体がばらつき、統一した結論を導くことが難しいということがあります。

新しいことへの挑戦心が大切になるのは、他の仕事でも共通する内容だと思います。

特にバイオ研究では、1ヶ月間毎日サンプルを仕込み、

自分の研究者としての人生をかけて行った実験でも、

結論付けることができない結果になることが日常茶飯事で、

出てくる結果もほとんどがネガティブな情報です。

この経験を積み重ねていくと、思考がネガティブになり、

新しいことへの挑戦を踏みとどまりやすくなりがちです。

sangorou
sangorou

この挑戦だけは、生物研究者としては失ってはいけないものですね。

私には思い出したくはない苦い経験があります…

しかし、新しいことへ挑戦していかないと大きな進捗を得ることは難しくなります。

例えば、長期間丁寧に仕込んだ生物サンプルの成分組成を解析しようとしても、データがばらつく、

機械の故障によりデータ化できないという事態が幾度も重なったとしましょう。

そうしたストレスフルな状況下でも人前での発表に耐えうる結果を出すには、

なんども工夫しながら挑戦するしかありません。

そのため、バイオ研究では人並み以上の挑戦心が求められてくるのかもしれません。

ネガティブな結果に対して感情的にならず、次への活かし方を考える

ネガティブな結果に対して、自分自身を責めすぎず、

次への改善点やもう一度トライするといった行動を取ることはとっても大切です。

何度もお伝えしていますが、バイオ研究では大部分がネガティブな結果になります。

そして、1つ1つの実験に時間と労力がかかるので、

その実験にかける想いも人によっては強烈です。

何としても成功してほしいと手塩にかけて育てたサンプルが、ものの見事にネガティブな結果を出す、

あるいは結果が出る前段階で挫折してしまう、

結果が出ても内容が曖昧で結論付けることが難しいという出来事を日々経験していると

誰しも辛くなるものだと思います。

sangorou
sangorou

そんなデータに自分の人生がかかっているなどと強烈に思い込んでいた私にとっては、

当時は耐え得る代物ではありませんでした。

そういう点で私はまだまだ未熟者でした …

その辛さに対して自分の思考力や能力が不足していると勘違いして、

自己卑下に陥ってしまうと大変なことになってしまいます。

人生お先真っ暗モードへの突入です。

sangorou
sangorou

実際には、この苦難を乗り越える経験をすることも研究者には大切かもしれませんね。

そうではなく、ネガティブな結果が出ても、「ふ〜ん。そんなもんか。」と無感情に受け入れて、

問題の原因追求や、解決策の探索など、次へと行動していく姿勢があると、

研究に対するモチベーションを失わずに済む可能性が高いです。

未来の結果に対して過度に期待せずに、粛々と作業としてこなしていくことが意識的にできると

とても良い精神状態を維持できると思います。

細かい作業が得意で仕事が丁寧

バイオ研究では解剖や複雑な機械操作、工程が多く日数のかかるサンプル処理、無菌状態での操作、

動物の微細な変化への気づき、言われないと気づかないようなサンプル画像の違いなどに

注意を払うことができる能力は成果に直結していきます。

・結果に影響が出なさそうだからこれ以上の細かい操作はもういいや

・(勝手な判断によって)ここの部分はおそらく正しいだろうから、

 少しだけ違うプロトコルにしよう

・なんかこのハエの動きがきになるけど、まあ生きてるから大丈夫か

・時間に追われてて操作の丁寧さを少し犠牲にするのは仕方ない…

といったことは、後々致命的なミスに繋がっていくことが多いです。

例えば、DNAポリメラーゼという物質によってDNAを増幅する際には

温度の調整が必要になることがあります。

しかし、大体のDNA増幅の際には温度を調整しなくても増幅されていきます。

このため、「温度調整の影響は小さいから全て一緒にしてしまえ!」と行動した結果、

全くDNA増幅できないことがありました。

また、生物サンプルのタンパク質を扱う操作では、

気泡が少しでも入ることで得られるデータのクオリティに大きく影響するということがあります。

というのも、気泡が装置のごくわずかな隙間に入り込み、電流に乱れが生じて、

サンプルがうまく分離できない症状が起こってしまうからです。

こうなると、せっかく時間をかけて回収したサンプルを解析にかけても

ノーデータという結果に終わってしまいます。

sangorou
sangorou

ああ。こんなしょうもないことが何度あったことか・・・

こうした、細かい作業を丁寧にこなしていくことはバイオの研究では重要な素質になります。

もともと細かい作業を丁寧にこなしていく素質に自信がある方は、

バイオ研究に向いている可能性が高いです。

しかし、細かい作業をこなしていく自信がないという方でも、

この能力は努力によって比較的容易に向上できると思います。

例えば、

細かい作業を行うための努力

・プロトコルに毎回チェックをつけながら操作を行う

・ミスが生じやすいポイントを周りと共有してあらかじめ注意しておく

と言った対処法を持っておくと、苦手な人でも細かい作業を丁寧にこなしやすくなります。

周りの人にアドバイスを求めたり、周囲に対してアドバイスすることを心がけている

周りの人とコミュニケーションをとって、研究のアドバイスをもらったり、

逆にアドバイスを提案していくことに苦がないという方はバイオ研究者に向いています。

「え、ちょっと意外」と思われる方は少なからずいらっしゃるのではないでしょうか?

世間一般には、研究者にはコミュニケーション能力は求められていない

というイメージを持っているかもしれません。

例えば、

・研究室で一人でひたすら実験をしている

・人とできるだけ関わりたくない人が多い

・上手くしゃべることができない人が多い

・ドインキャ

と言ったイメージを持たれているかと思います。

sangorou
sangorou

ひどいイメージだなあ、笑

でも、実際にはそんなことないんです。

積極的に周りに意見を求めて、わからない操作を教えてもらうことで、

技術伝達を受けることが大事になってきます。

そのため、周りの人と関わって実験をしていくことが研究の肝です。

さらに、わからないことが出てくるのはほぼ毎日なので、

頻繁にコミュニケーションをとる必要に迫られるのがバイオ研究です。

私の経験上、わからないことを一人で解決しようとすると、

どれだけ研究に対する熱意があっても簡単に心が折れやすくなると思っています。

自分で調べて、細かい条件を変えたりして、何度操作を繰り返しても

何一つ報われない結果となってしまった場合、

実験結果に対する思いが強いほどストレスを感じやすくなると思っています。

私の場合は、 白黒はっきりとした答えを求めがちな性格からか、

自分の行った行動が結果としてはっきりと現れてこないと裏切られた感覚に陥り、

ストレスが蓄積していきました。

こうして、研究に対するモチベーションが削がれて行った感覚があります。

こうした事態を防ぐのが、周りの人に助けを求めることだと思っています。

同じような実験の経験がある人に意見をもらうことで、

今まで自分が何度も苦労してきた部分が嘘のように簡単に解決することがあります。

そのため、周りの人にアドバイスをもらうことは大切なことなのです。

また、実験だけでなく、研究発表や学会などでうまく口頭で自分の考えを伝えることが

研究者として優秀だなと周りから判断されます。

自分の意見や考えを他者にうまく伝えることができない方は、

所属する組織以外の方から信頼を得にくくなってしまうのです。

必要なコミュニケーション能力

・周りの人と実験のアバイスを共有できる能力

・自分の意見を言葉で表現できる能力

すなわち「コミュニケーション能力」は研究においてもかなり重要なウェイトを占めます。

この能力に自信がある人はバイオ研究者として活躍されやすいのではないでしょうか。

活用できるものは可能な限り活かしていく心構え

バイオ研究では、活用できるものを探していく能力や、

それを実際に取り入れることができる能力は重宝されます。

そもそも、バイオ研究は時間がかかり、使用できる道具も限られます。

また、どんな道具が使用できるのかを理解するのにも一苦労で、

助教や准教授レベルでも理解できない方法や道具は沢山あります。

そんなレベルなので、1学生が理解できる範囲は限定的です。

さらに、研究が進んでも何を観察できているのか、

何を解明しようとしているのかがわからなくなってくるのがバイオ研究です。

そんな、カオスな状況になりがちなバイオ研究に対して、

1大学院生が単独で解決していくことは不可能に限りなく近い離れわざかもしれません。

sangorou
sangorou

逆に、そんな困難な状況の中で、使用できる道具を自分の力で探し当てた時には、感慨深い感情が湧いてきたりします・・・涙

では、どうやって解決していくのか?

おそらく、以下の2点に尽きるんじゃないかと思います。

活用するために必要な能力

・同じような研究を行っている人のやり方を模倣する

・周りのメンバーからのアドバイスを素直に受け入れて実行する

「同じような研究を行っている方のやり方を模倣する」については、

「論文で使っている試薬や抗体を自分の実験にも取り入れてみよう」

「他のチームで行っている最新の技術を真似てみよっかな?」

と言ったことが私の経験や、周りでよく見られる手法です。

そして「周りのメンバーからのアドバイスを素直に受け入れて実行する」については、

「進捗報告会やチーム内のミーティングで指摘された項目を解決するために実験を行う」

「普段話している友人から何気なく言われた手法を試してみよっかな?」

などがあると思います。

この上記2点を意識しながら、仮説を立て、実験計画を組み立てていくことで

解決できる瞬間に巡り会える可能性が高いです。

そして、試行錯誤を繰り返す中、やっとのことで成功にまでこぎつけた時は、

この上ない達成感や優越感に浸ってしまいます。笑

この瞬間がバイオ研究者にはたまらないのかもしれません。

sangorou
sangorou

脳内ドーパミンがドパドパ出てきます(笑)

まあ、そんな話はさておき、身の回りで感じた事・起きた事を

何でも自分の研究に取り入れていこうという姿勢は非常に重要な視点になると考えています。

まとめ

というわけで、ここまでバイオ研究者に向いている人の特徴について話してきました。

  1. 新しいことに挑戦して失敗することへの恐怖感が小さい
  2. ネガティブな結果に対して感情的にならず、次への活かし方を考える

  3. 細かい作業が得意で仕事が丁寧・確認作業を大切にする
  4. 周りの人にアドバイスを求めたり、周囲に対してアドバイスすることを心がけている
  5. 活用できるものは可能な限り活用していく心構え

の5点が大切な考え方でしたね。

私の経験や周囲の人を見てきた上で、私自身のフィルターを通しての

バイオ研究に必要な5つの観点を選ばさせていただきました。

この5つの観点に当てはまっているなと思った項目や、

逆にちょっと厳しいかもなと思う項目などがあることでしょう。

最初の2項目に関しては、物事に対する感受性にまつわる内容なので、

遺伝的な要因や生まれながらの生育環境などの影響が大きいことでしょう。

そのため、根本的に変えるということはかなり難しいと思います。

しかし、意識的に心構えを変えてみたりすることで

うまく対応できる余地はあるのかなと思います。

また、その他の項目に関しては、日頃の実験に対する心構えや

努力で上達しやすいものだと思っています。

研究は面白い部分もある反面、そのほとんどが地味で辛いお仕事となります。

しかし、「バイオ研究をしたい!」「バイオ研究に携わってみたい!」という想いがあって、

皆さんここまで歩んで来たのではないのでしょうか?

そんな想いを、ずっと抱き続けていくためにも、

上記の5点を意識しながら日々過ごしていただければ、バイオ研究者の私としてもうれしく思います。

というわけで、当記事は以上です。

ではまたっ。

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